「ローン特約」って何?不動産売買でよくあるトラブルとローン特約のメリット・デメリット
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数千万円の不動産を現金一括で購入するという方はあまりいらっしゃらないと思います。
おそらく、ほとんどの方が不動産の購入資金を金融機関などからの借り入れで調達しているのではないでしょうか。
特に、日本は超低金利時代が長く続いているため、ローンの金利と賃貸収入の利回りの差を利用した不動産投資を行っているという方も多くいらっしゃいます。
しかし、ローンを前提として不動産を購入する場合、融資を受けられなければ、不動産の購入自体が事実上不可能になってしまう場合もあるでしょう。
そのような場合に不動産売買契約そのものを白紙にすることができるのが「ローン特約」です。
本記事では、ローン特約とはどのようなものなのかについて、メリットやデメリットなどとあわせて解説します。
ローン特約とは何か
買い主側の事情によって不動産売買契約を解除する場合、通常であれば支払い済みの手付金は返還されず、場合によっては違約金が発生することもあります。
しかし、ローン特約が契約条項として入っており、かつローンが不成立だった場合、不動産売買契約そのものを解除して、契約を白紙に戻すことが可能となります。
このような場合、手付解除や契約違反といった契約解除にあたっての条件は適用されません。
ローン特約にも、大きく2通りがあります。
ひとつは、融資承認が得られるか、得られなかったかの結果が出た時点で、自動的に不動産売買契約が成立、あるいは白紙になる「条件型」(「解除条件型」あるいは「停止条件型」)、もうひとつは、買い主に「契約を解除する権利」を与える「解除権留保型」(解除権をもつ買い主が、売り主に対し解除の意思表示をすることにより契約解除を行う)です。
契約締結時には、このどちらの契約になっているのか、また詳細な条件がどう定められているかの確認が必要です。
ローン特約の種類
ローン特約は大きく分けて「解除条件型」と「解除権留保型」の2種類が含まれます。
下記にて、それぞれの特徴について記載しておりますので、ローン特約を締結する前に確認しておきましょう。
解除条件型
解除条件型は、住宅ローンの審査に通らなかった場合に自動的に契約が解除される仕組みです。
買主から特別な手続きを行わなくても契約は無効となり、支払った手付金も返還されるため、買主にとって安心度の高い特約といえます。
ただし、契約書に記載された金融機関や融資条件に基づく審査に限られる点には注意が必要です。
想定外の金融機関に申込んで不承認となった場合は対象外となるケースもあるため、契約内容の確認が不可欠です。
また、売主側からすると契約の安定性に欠けるというデメリットがあります。
そのため、近年では解除条件型を避け、後述の解除権留保型を採用するケースも増えています。
解除権留保型
解除権留保型は、住宅ローンが不承認となった際に買主が自ら解除を申し出ることで効力が発生する仕組みです。
自動的には契約解除にならず、買主の意思表示が求められます。
解除権留保型では、買主は融資結果を確認したうえで解除するかどうかを選べます。
契約解除を希望する場合には、解除期日までに売主へ書面などで通知する義務があります。
期日を過ぎると解除できず、契約が有効のまま残ってしまうため、注意が必要です。
売主にとっては解除条件型よりもリスクが低く、契約の安定性が保たれるメリットがあります。
一方、買主は期日を守らなければならず、管理を怠ると不利益を被る可能性があります。
以下の表は、解除条件型と解除権留保型の違いをまとめたものです。
| 解除条件型 | 解除権留保型 | |
| 特徴 | 住宅ローンの審査が通らなかった場合に、事前に決められた期限になると自動的に契約が解除される | 住宅ローンの審査が通らなかったときに、一定期間だけ契約を解除する権利が発生する |
| 売り主への契約解除の意思表示 | 不要 | 必要 |
| 別の金融機関からの融資 | 受けられる可能性がある | 受けられない |
ローン特約のメリット

ローン特約をつけることによって、下記のようなメリットを得ることができます。
損失を防ぐことができる
不動産の売買契約を締結する際には買い主がその物件を必ず買います、という約束を「手付金」という形で示します。
手付金の支払いや受け取りについては法的な義務はありませんが、長い歴史をもつ慣例のひとつです。
手付金を支払ったにもかかわらず、対象となる物件を購入しなかった場合、多くのケースでは手付金は戻りません。
ローン特約を締結しておくことによって、契約解除の際に発生するペナルティが発生しなくなる点はメリットといえます。
安心感を得られる
収入やほかの金融機関から借り入れがある場合など、住宅ローンの審査に通るかどうかは不安に感じるものです。
特定の理由で審査に落ちたり、ペナルティを許容できるほど金銭的余裕がなかったりする際は、心身に余裕は生まれません。
売り主と買い主間の双方に合意を得るローン特約を締結しておくことによって、これらの不安を取り除くことができます。
あらかじめローン特約を締結することによって、審査に落ちてしまってもリスクを最小限に抑えられるため、安心感を得られます。
ペナルティを受けずに売買契約を解除できる
ローン特約なしで売買契約を締結し、買い主が住宅ローンの審査に落ちた場合、買い主の手付金は戻りません。
そのため、買い主のなかには金銭的な損失を避けるために、契約解除に応じてくれないことがあります。
話が平行線で解決が見えなかった場合、売り主と買い主の間で裁判沙汰に発展してしまうことが考えられます。
ローン特約を締結することによって、買い主はペナルティを受けずに契約を解除することができます。
ローン特約のデメリット

一方、ローン特約を締結する際は、下記のデメリットを理解しておきましょう。
一定の知識が必要
主にローン特約は買い主を守るために存在するものであり、さまざまなリスクを避けたうえで不動産売買を行うことができます。
ローン特約の契約形態によっては、契約解除の際にローン特約が適用されないことがあるのです。
本来、住宅ローンが通った方にとってはローン特約には何のリスクもありませんが、ローンが通らなかった場合は注意が必要です。
あらかじめローン特約に関するさまざまな知識を身に付けておかなければ、いざというときにトラブルを招いてしまいかねません。
契約解除に条件がある
先述の通り、ローン特約のなかには「解除条件型」と「解除権留保型」の2種類が含まれます。
解除条件型は住宅ローンの審査に落ちた時点で契約が白紙となってしまうため、買い主の意思や行動が介入する余地はありません。
一方、解除権留保型の場合、審査に落ちた際事前に決めた期間内に買い主が意思表示をする必要があります。
期間内に自分の意思を示さなかった場合、手付金の支払いを含めて無条件での契約解除ができなくなる点には注意が必要です。
ローン特約のよくあるトラブル3選
ローン特約関連でよくある3つのトラブルをご紹介します。
ローンを申し込む金融機関名が契約書に書かれていない
不動産売買契約書に、ローンを申し込む金融機関名が具体的に記載されておらず、単に「金融機関等」となっていたり、「A銀行、B銀行等」となっていたりすることがあります。
仮に「金融機関等」となっていた場合には、「買い主がローンを希望する銀行で断られても、その他の銀行ではローンが通る可能性がある」「銀行でなくてもいい」と解釈されてしまい、ローン特約の解除条件にあたらないと判断されてしまうことがあります。
一方、「A銀行、B銀行等」となっていた場合では、A銀行やB銀行でローンを断られたら、他の銀行にも申し込まなくてはなりません。
ただ、この場合は銀行以外の、例えばノンバンクなどは対象外となります。
ノンバンクなどは銀行とは金利等の融資条件が異なるために、一般的に「銀行等」には含まれないと考えられているからです。
ローンが希望の金額に満たなかった
ローンの金額が具体的に記載されていないという場合もトラブルの原因になります。
申し込んだ全額のローンが通らず一部しか借りられなかった場合でも、無償解除の条件としてローンの金額が明確に記載されていなければ、ローン特約の解除条件にあたらないと判断されるからです。
金額についても、条件を明記すべきでしょう。
ローン不成立以外の理由で不動産売買契約を破棄したい
- 「ローン審査は通ったものの、購入代金のほかに諸費用が思ったよりもかかることがわかった」
- 「購入資金の一部として期待していた家族からの援助がなくなった」
- 「今、住んでいる住宅の売却代金が想定よりも低かった」
こうした理由で不動産売買契約を破棄することは自己都合での解約となりますから、当然ながらローン特約は適用されません。
ローン特約で解除できるのは、契約内容にもよりますが、あくまでも金融機関でのローン審査が通らなかったケースのみです。
また、ローンの審査を受けている間に買い主が転職してしまうなど、審査に影響を与える属性の変更があった場合も自己都合とみなされることがあります。
返済に影響を与えるような属性の変更はトラブルになりやすいので、回避すべきでしょう。
ローン特約ではここに注意!
下記にて、ローン特約を締結する際に押さえておくべき注意点をご紹介します。
契約書には条件を明記する
不動産売買契約書には、「ローンを申し込む金融機関名」「ローンの金額」「ローンが承認されるまでの期間」「ローンが通らなかった場合の対応策」などの条件を明確に記載するようにします。
契約書上で条件を明確にしておくことで、トラブルを回避できる可能性が高くなります。
ローン特約においては解除条件型と解除権留保型のどちらなのか、契約の解除条件や期間はいつなのかを明記してもらいましょう。
これらが記載されていなかった場合、売り主と買い主間で認識の相違が発生してしまい、トラブルに発展する可能性が高くなります。
解除期限までに意思表示を行う
「解除権保留型」の契約で、「○年○月○日を解除期限とする」という条件がつけられていた場合には、期日までに売り主に対して解除権を行使しなくてはいけません。
この場合、期日を過ぎてから解除の意思を伝えても、解除の条件にはあたりません。
ただし、仲介業者によっては、期日内に解除の意思を伝えたにもかかわらず、売り主には意思が伝わっていなかったということもあるようなので、トラブル回避のために、買い主から売り主に対して内容証明郵便等で直接通知するなどの対応がより確実です。
なお、買い主の意思表示については、買い主が発した通知が売り主に到達してから効力をもつことが民法第97条に明記されています。
わざとローン審査に落ちた場合は解除できない場合も
ひとつの物件で売買契約やローン特約を締結している際、ほかの物件と契約するとローン特約は適用されません。
また、悪質な買い主のなかにはほかに良い物件を見つけた際、わざと審査に落ちて契約解除を狙うような人がいます。
このような行為についてはローン特約が認められず、場合によっては契約違反となります。
契約違反となってしまうとローン特約を締結できなかったり、そもそも不動産契約を締結できなかったりします。
ローン特約に盛り込むべき項目

ローン特約を効果的に機能させるためには、契約書に具体的な条件を明記しておくことが欠かせません。
盛り込むべき項目を整理し、その理由を理解しておくことで、買主と売主双方のリスクを減らせます。
以下にて、ローン特約に盛り込むべき項目について解説します。
利用する金融機関名
契約書には、住宅ローンを申し込む予定の金融機関名を必ず記載します。
明記がなければ買主が任意の金融機関に申込みを行い、不承認を理由に契約を解除することも可能になってしまいます。
売主にとっては予期せぬ契約破棄のリスクが高まるため、双方の認識を一致させることが重要です。
借入希望額と融資条件
借入額や返済期間、金利タイプなど、具体的な融資条件も盛り込むべき要素です。
希望額に満たない承認が下りた場合に解除できるのかどうか、条件を明示しておかなければトラブルの原因になります。
特に、融資額が大きい場合やフルローンを前提とした契約では、この条件設定が買主のリスク回避につながります。
解除期限(ローン特約の期日)
ローン特約を適用できる期間、すなわち解除の意思表示を行える期限を定める必要があります。
一般的には契約締結日から数週間以内に設定されるケースが多く、期限内に通知がなければ契約は有効とされます。
期限を明確にしておくことで、売主側もスケジュールを確保しやすくなり、取引全体の透明性が高まります。
通知方法
契約解除を行う際の通知方法も記載が必要です。
口頭ではなく書面や内容証明郵便など、証拠が残る方法を指定することで、後日の紛争防止につながります。
特に解除権留保型では買主の意思表示が必須となるため、通知方法を明確にすることは不可欠です。
手付金の扱い
ローン特約が発動された場合、支払済みの手付金をどのように取り扱うかも重要です。
通常は買主に全額返還されますが、契約書に明示がなければ返還がスムーズに進まない可能性があります。
返還の方法や時期を明確に定めておくことで、双方の安心感につながります。
複数金融機関への申込み可否
複数の金融機関へ同時に申込みが可能かどうかも、記載しておくと安心です。
買主にとっては融資承認を得られる確率を高められ、売主にとっては解除リスクを減らすことになります。
特に近年は金融機関の審査が厳格化しているため、複数申込みを前提とした契約が増えています。
想定外ケースへの対応
自然災害や金融機関の合併など、通常想定しにくい事態が発生する場合の取り扱いを明記しておくことも重要です。
不測の事態が生じても契約関係を維持できるよう、予防的に取り決めておくと後の安心につながります。
これらの項目を契約書に盛り込むことで、買主は無用な損失を避けられ、売主も契約破棄のリスクを軽減できます。
あらかじめ条件を明示することが、双方にとって健全な取引を実現する鍵となるのです。
ローン特約の期日に審査が間に合わない場合の対処法

ローン特約の期日に審査が間に合わない場合、ローン特約を利用して契約を解除するか、売り主に相談するかの2択になります。
こちらでは、それぞれの対処法についてご説明します。
ローン特約を利用して契約を解除する
ローン特約はあらかじめ決められた期間内に承認を得られなかった際に、契約自体を白紙にできる特約になります。
特約期間を過ぎてしまい、本審査を通過しなかった場合はローン特約を使えず、高額な違約金を支払わなければなりません。
解除条件型は住宅ローンの審査に落ちた時点で、解除権留保型は審査に落ちた際に買い主が意思表示をする必要があります。
解除権留保型は期間内に意思表示をしなかった場合、先述した違約金が発生するため、早急な対応が必要です。
そのため、ローン特約を利用する際は締結前に解除条件型なのか、解除権留保型のどちらなのかを確認しましょう。
売り主に相談する
本来、ローン特約による解約などは期日内に事務的の処理されるもので、感情が入る余地はありません。
しかし、売り主側からするとせっかく購入の意思を見せているお客様を逃してしまうことになります。
買い主からしても、自分が購入したい物件を特約の期日に間に合わないから解約しなければならないのは心苦しいものです。
また、購入してくれる可能性が高い新たな買い主が現れた場合、売り主が既存の買い主との契約を解約する可能性があります。
買いたくても買えないリスクを避けるために、ローン特約の期日に審査が間に合わないとわかった段階で売り主に連絡しましょう。
不動産投資ではローン特約を付けない場合もある

住宅購入の契約では、買主を保護するためにローン特約が設定されるのが一般的です。
しかし、不動産投資の場合は事情が異なり、下記の理由によりローン特約を付けないケースも少なくありません。
投資用ローンの審査基準が厳しい
投資用ローンの審査基準は、住宅ローンよりも厳しい傾向にあります。
金融機関は物件の収益性や投資家の事業計画を重視するため、融資が成立しない可能性も想定されています。
そのため、売主は「ローン特約付きでは契約が不安定になる」と考え、特約を認めない場合があります。
売り主側のリスク回避
不動産投資では高額な取引が多く、売主側もリスクを回避したい意向が強いものです。
買主にとっては融資不成立時に契約を解除できないリスクを負うことになりますが、その分交渉次第では価格面や契約条件において有利になる可能性もあります。
ローン特約がない場合は「手付解除」

残念ながら、ローン特約がない状態で賃貸借契約を締結し、ローンの審査が下りなかった場合は手付金が返ってきません。
一方、手付金を受け取った売り主側からいかなる理由であっても解約をする場合、手付金の2倍を返却する必要があります。
こちらは手付解除と呼ばれるもので、買い主の手元には実質的に手付金の2倍のお金が残ることになるのです。
「手付解除」できない場合もある?
下記のような状況では、手付解除が認められない点には注意が必要です。
- 手付金が解約手付としての性質を有していない
- すでに売り主が契約の履行に着手している場合
上記でいう契約の履行とは、引き渡しや所有権移転登記手続きなどの準備を指します。
そのため、手付解除はあくまで売買のみに関するものであり、それ以降には効力を発揮しないものであるといえます。
ローン特約は慎重に
本記事では、ローン特約について解説しました。
気に入った不動産が見つかった場合、「欲しい」という気持ちが先走ってしまい、資金計画や売買契約書の見直しなどがおろそかになってしまうことがあります。
決断力も大切ですが、ローン特約を含む不動産売買契約は、契約する前に一度、冷静に契約書の条項や条件を慎重にチェックすることが大切です。
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