注目のESG投資ってどんなもの?環境・社会の課題解決を目指す投資
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ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取り、従来の財務情報だけではなく、環境・社会・企業統治に配慮している企業に対して投資するものです。事業活動を行うなかで企業の社会的責任(CSR)が重視されるいま、年金基金などの大口投資家を中心に注目を集めています。欧米企業を中心に広がってきたESG投資の波は、日本企業をも巻き込みつつあります。今回は、ESG投資の基礎についてみていきましょう。
ESG投資には7パターンある
ESG投資には大きく分けて、以下の7パターンがあります。
- 児童労働や武器製造などESGの観点から問題がある企業を投資ポートフォリオから除外する「ネガティブスクリーニング」
- 従業員の福利厚生や環境保護などESGでの評価の高い企業を投資対象に組み入れる「ポジティブスクリーニング」
- 「モノ言う株主」として、対話や議決権の行使などを通じて投資先企業の事業活動に改善を促す「エンゲージメント・議決権行使型」
- 自然エネルギーなど社会に貢献する技術、貧困など途上国の社会問題を解決する投資、小規模・零細企業に対する「マイクロファイナンス(小口融資)」など、課題解決に向けて直接的に働きかける「インパクト投資」
- 2000年に発足した「国連グローバル・コンパクト(「人権保護」「不当労働の排除」「環境への対応」「腐敗防止」に関連する10原則)」など国内外の法令や規範に照らし、基準を満たしていない企業を投資ポートフォリオから除外する「規範に基づくスクリーニング」
- 従来の財務分析、企業評価においてESG要素を考慮する「ESGインテグレーション」
- クリーンエネルギーやグリーンテクノロジーなどサステナビリティ(持続可能性)に関連の深いテーマや銘柄への投資を行う「サステナビリティ投資」
ESG投資のデータを収集している国際団体のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)によると、7つの投資のなかで一番多いのは「ネガティブスクリーニング」。次いで、「ESGインテグレーション」「エンゲージメント・議決権行使型」が続きます。
なぜESG投資が重要か
ビジネスのグローバル化が進むなか、環境や人権に配慮した企業の在り方を問う声が高まっています。企業は自らの利益を追求するだけでなく、社会の一員として責任を果たすことが重視されているのです。
また、気候変動による自然災害や少子高齢化、人口減少なども事業リスクとして認識されるようになりました。例えば、自然災害が増えれば、保険会社はそれだけ保険金の支払いが増えて経営を圧迫します。海洋資源が減少すれば、飲食業や食品加工業は原材料費の高騰に悩むようになるでしょう。人口が減少して働き手が減ることになれば、運送業者はスムーズに荷物を配達できなくなってしまうかもしれません。このように、企業は倫理観や社会貢献だけでなく、事業継続と収益確保のために、積極的に社会問題の解決に取り組む必要が出てきています。
ESG投資は、慈善活動や寄付といった採算度外視になりがちなCSR活動とは異なります。一般的に、コーポレートガバナンス(企業統治)がしっかりしている企業は従業員のモチベーションも高く、業績も安定的といわれています。投資家としても好業績の企業に投資すればリターンが多く見込めるため、収益性の面からもESG投資が注目されているというわけです。
ESG投資のメリット
こちらでは、ESG投資のメリットをご紹介します。
ブランド価値が向上する
先述の通り、ESGはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取ったものです。
企業が継続的に活動を行うためには、ビジネスモデルが社会貢献や社会的責任を果たしている必要があります。
○○のサービスで社会に貢献していると、消費者や投資家が対象となる企業に抱くイメージや社会的信頼が向上します。
結果として、企業に対するブランド価値が向上するため、ESG投資は将来の成長を手助けしてくれるものになります。
ビジネスが持続可能となる
ESG投資を意識したビジネスを継続することで、消費者や投資家が抱くイメージが向上するため、ブランド価値が向上します。
長年経営をしている企業にはさまざまな観点から、多くの方がポジティブなイメージな何かしらの実績を保有しているのだろうと考えるものです。
そのためには中・長期的にESGに配慮した経営を行う必要があり、社内外問わず多くの方から支持を得られます。
結果として、双方向からの支持により企業経営の安定化を実現することができます。
安定した資金調達が可能となる
ESG投資は現在注目されている投資方法のひとつであり、今後もESG投資に参加する投資家は増加すると考えられます。
ESGの評価が高い企業は社内外問わず、ステークホルダーから高い信頼性を獲得しています。
ステークホルダーから高い支持を得ている企業は、安定した資金調達を実現できる可能性が高くなる傾向にあります。
資金調達はビジネスを安定・促進するために不可欠な要素であることから、ESGを意識した新規事業も始めやすくなるでしょう。
社会貢献が可能
ESG投資は環境や社会、企業統治に対して貢献している企業に投資する方法です。
このような環境問題や社会問題の解決に取り組んでいる企業への投資は、投資家自身も社会貢献をしていることといえます。
同じ金額を投資しても、社会貢献度が高い企業と低い企業への投資は、精神的な満足度が異なるものです。
「投資するなら人や世間のためになっている企業へ」と考える投資家は多くいらっしゃるため、投資家を集めやすくなるでしょう。
ESG投資のデメリット
一方、ESG投資には下記のようなデメリットがあるため、注意が必要です。
短期的な投資には不向き
ESGは短期間で実現できるものではなく、中・長期的な計画を持って実行されるものです。
そのため、ESG投資の対象となる企業は長期的な持続可能性を追究する傾向にあります。
また、ESGに関する取り組みは数値化が難しいものが含まれているため、判断が難しいものです。
このような性質から、投資家にとってESG投資の対象企業であるといった判断が難しい点がデメリットであるといえます。
正しいESG企業を見極めにくい
ESG投資を行う際には、ESG経営に取り組んでいる企業を見極める必要があります。
しかし、先述の通りESGに関する取り組みや成果は数値化が難しいものが含まれており、投資家の判断を迷わせる要因です。
また、ESGに取り組んでいる企業であっても、どの要素に重点を置いているのかは企業経営の方針に依存します。
「自社はESG経営に取り組んでいる」とは言ったものの、実際には取り組んでいないといったことも考えられます。
経営者の振る舞いが目立つ
ESG経営に取り組む企業は役員や経営者の判断に依存するため、自然と経営者の振る舞いが注視されます。
役員や経営者がESGに反する言動を取ってしまうと企業全体の評価が下がってしまい、投資家が離れるリスクがあります。
ESG経営に取り組む企業は、これまで以上に株主や投資家からの目が厳しくなるため、動きにくくなる点には注意が必要です。
株主や投資家においても、役員や経営者の性格や言動などを注視しなければならないため、負担に感じる可能性があります。
ESGの歴史
ESGを考慮した投資の起源は、タバコやアルコール、ギャンブル関連企業への投資を禁止した1920年といわれています。
1960年代になるとこれら以外にも社会課題が追加され、1990年には環境課題への意識が高まりました。
本格的に普及し始めたのは、2006年に国連が提唱した「責任投資原則(PRI: Principles for Responsible Investment)」です。
PRIでは下記の原則が定められており、これらにコミットすることが約束されています。
- 私たちは、投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込みます
- 私たちは、活動的な所有者となり所有方針と所有習慣にESGの課題を組み入れます
- 私たちは、投資対象の主体に対して ESG の課題について適切な開示を求めます
- 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ実行に移されるように働きかけを行います
- 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために協働します
- 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します
PRIへの賛同者は年々増加傾向にあり、2024年現在では署名機関数は5,382機関といわれています。
運用資産合計は1京8,000兆円にものぼり、こちらも年々増加傾向にあります。
参考ページ:PRI協会ホームページ「責任投資原則」
ESG投資のうねりはとめられない。日本企業も責任を問われている
サプライチェーンがグローバル化するなかで、日本企業にもESG投資の対象となるべく、原料の調達や下請け工場での違法労働撲滅といった社会問題に取り組む姿勢が求められています。
また、日本の機関投資家も世界の潮流にのって、ESG投資を拡大させています。日本の公的年金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2017年から企業統治や女性活躍、炭素効率性の向上に取り組む企業へ重点的に投資しています。GPIFの18年度末のESG資産残高は3兆5千億円に達しました。
持続可能な社会への取り組みが求められるなか、投資家にもそうした企業をサポートする責任が求められています。ESG投資は今後ますます拡大すると考えてよいでしょう。
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