含み益(ふくみえき)とは?意味や利益確定の考え方をわかりやすく解説
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株式投資や投資信託は、購入時よりも時価が上がればうれしいものです。
そのような状態を「含み益」といいます。含み益は歓迎すべき状態ですが、まだ利益は確定しておらず、今後、時価が下がる可能性もあります。含み益の出ている金融商品の売却タイミングはどう図っていくといいのでしょうか。
含み益は現時点の評価である
株式投資や投資信託などにおける「含み益」とは、時価が購入時よりも高い場合の、その差額のことです。時価のことを評価額ともいいますので、「評価益」と呼ぶこともあります。例えば、100円で購入した株の時価が120円になっていれば20円の含み益になります。ただし、利益が確定しているわけではないため、時価が下がって購入時よりも安くなる「含み損」に転落する可能性もあります。時価は、購入や保有にかかる諸経費も考慮するのが理想です。とはいっても、買い増しや途中での一部換金、分配金の再投資などがある投資信託では諸経費が見えにくいかもしれません。そのため多くの証券口座では、次のような要素を総合して「トータルリターン」が確認できるようになっています(以下は一例)。
- 現在の評価金額 :基準価額・保有口数・取引口数等を考慮した時価
- 累計買付金額 :買付時にかかる手数料
- 累計受取分配金額 :税引後の分配金(再投資の場合)
- 累計解約金額 :解約にかかる手数料を差し引いたもの
これらの費用を総合してプラスやマイナスの評価をするのが「トータルリターン」です。トータルリターンの詳細は取引されている金融機関によって異なりますので、証券口座のWEBサイトや郵送されてくる取引残高報告書などで含み益の有無・金額を確認してみましょう。
含み益は確定してこそ利益になる
含み益を見て「まだ上がるかも」と期待していると売却のタイミングを逃し、時価が下がってしまうこともあります。売却して利益を得るのが資産運用の最終目標ですが、ベストのタイミングで売却するのは容易ではありません。なかには、含み益が生じている段階で利益確定をしたにもかかわらず、その後さらに時価が上がってしまい、「もう少し待てばよかった」「売却のタイミングを間違えた」と思った方もいるのではないでしょうか。利益を得たならば後悔しなくともいいと感じるかもしれませんが、売却後に時価が急上昇すると意外と悔しいものです。
逆に、含み損が発生している場合には、これ以上損失を大きくしないための「損切り(ロスカット)」を行います。損切りも、行ったあとに時価が戻ることがあるため、結構決断が難しいものがあります。
「利益が出ているから売却する」「損が膨らまないうちに売却する」と、どちらも目的はシンプルですが、いざ実行するとなると、躊躇してしまうという方は少なくありません。それは、「このまま待っていれば良いほうに時価が動くのでは」と期待してしまうからです。時価が上がっていても下がっていても、「売却」のタイミングは難しいといえます。
利益確定の判断ポイントを持っておこう
資産運用では、「待ち」の姿勢に入ってしまうケースが結構あります。したがって、適切なタイミングで利益確定(もしくは損切り)するためには、強い意志が必要です。とはいえ、局面ごとに売却時期を判断するのは難しいため、所定の時価になったら売却を行えるよう、ご自身で「売却のルール」を設定しておくといいでしょう。
事前に目標値と最低値を決める
利益確定を行うためのルール設定は、「10%の利益が出たら利益確定」「10%下がったら損切り」などのようなものです。つまり、利益の目標値と最低値を設定し、その価格になったら迷わず売却する、ということです。目標値に到達したあとにさらに時価が上昇したとしても、目標の利益を得たことで納得しやすくなります。後悔せずに売却するためのルールと考えてもいいでしょう。
ルールを設定してもそのとおりに利益確定や損切りをする自信がなければ、2段階に分けて設定してみましょう。例えば、次のような感じで段階的に利益確定します。全額売却よりも一部売却のほうが容易に行いやすいですし、段階を経ることで売却のタイミングを逃すことが減ります。
- 10%の利益が出たら5割売却
- 15%の利益が出たら残りをすべて売却
なお、売却によって得た現金をそのまま口座に置いておくのは運用効率が悪くなります。また、利益確定で売却した資金で同じ金融商品を購入するのも良い投資とはいえません。時価が下がっていない限り、単に手数料が余分にかかるだけです。現金を素早く運用に回せるよう、売却後の使い道もあわせて考えおきましょう。
長期保有するか、短期で売却するか。保有の目的を明確にする
長期保有と短期保有とでは保有目的が異なるため、売却ルールの適用にも差が生じます。両者には次のような差異があります。
短期保有
継続して保有する意思がなく、値上がりしたらすぐに売却するのが「短期保有」です。含み益が目標値に達したらすぐに売却して利益確定します。逆に、パフォーマンスの悪化や、悪いニュースが出て含み損が出た場合など、損切りラインに達していなくとも損切りをして次の投資先を探すなど柔軟な対応をします。なお、売買ごとにポートフォリオを見直すことも忘れないようにしましょう。
長期保有
いつからが「長期」に当たるかは明確ではありませんが、少なくとも1年程度は保有する意思があるのが長期保有とされています。悪い材料が出ても一喜一憂せず、目標値に達しない限りは保有し続けるのが原則です。ただし、年に1度はポートフォリオを見直すようにします。
漫然と保有しがちな長期保有では、ポートフォリオの見直し時に利益確定するか、それとも損切りをするかを検討する必要があります。その際、目標値の達成・未達成以上に重視したいのが「リスクの度合い」です。1年間で、保有している金融商品のリスクが上がっていたら、含み益が少なくとも利益確定することをおすすめします。また、分散投資が適切にできているか、現金と金融商品とのバランスなど、資産全体でリスクを減らせるように再配分していきます。
含み益に税金はかかる?確定申告は必要?
結論として、株式投資の利益にかかる課税対象は解約して確定した利益であることから、含み益に税金はかかりません。
課税対象期間は1月1日から12月31までであり、原則として確定申告による納税が必要です。
下記にて、一般口座や特定口座など種類別の納税方法とタイミングです。
特徴 | 申告・納税 | |
一般口座 | 自分で年間の損益を算出 | 翌年に自分で行う |
特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が損益を算出 | 翌年に自分で行う |
特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が損益を算出 | 証券会社が行ってくれる |
上記より、源泉徴収ありの特定口座は損益算出から納税まで、すべての業務を証券会社が実施してくれます。
一方、一般口座の場合は損益算出から納税まで、すべてを自分自身で行わなければなりません。
算出した納税額が誤っていた場合申告漏れとなってしまい、下記のペナルティが課せられてしまいます。
- 納付すべき税額に対して50万円まで :15%
- 納付すべき税額に対して50万円を超える :20%
これらのペナルティを回避するために、株式投資は源泉徴収ありの特定口座で実施することをおすすめします。
法人では含み益に課税される場合がある
先述の通り、個人で株式投資を行う場合、含み益は課税対象になりません。
しかし、法人の場合は含み益が課税対象となり、税金を支払わなければならない可能性があるのです。
法人の場合、購入した株式が時価の変動により利益を得ることを目的とした「売買目的有価証券」とみなされることがあります。
下記は売買目的有価証券に含まれる証券であり、法人税法の規定に基づいて分類されます。
- 専担者売買有価証券
- 短期売買有価証券
- 金銭信託に属する有価証券
近年ではインターネット技術が発展したことにより、多くの企業で金融商品の売買が容易に行われるようになりました。
本来であれば含み益に税金を課さない「取得原価主義」が採用されてきましたが、それでは対応できなくなってきたのです。
法人化したあとに購入した株式が売買目的有価証券に該当するのか否かについては、専門知識が必要になります。
会計時の処理にも専門知識が必要になることから、個人ではなく税理士に相談して進行すると良いでしょう。
また、法人化することで含み益が課税対象となる可能性があることから、本当に法人化するべきなのかも考える必要があります。
コツコツ含み益を積み重ねていこう
含み益があっても、「もっと上がるのでは」と期待しているうちに時価が下がってしまった、ということはよくあります。今後時価が上がるかどうかを見極めるのは、投資上級者でも容易ではありません。自分の目標とする利益を獲得したら、いったん利益を確定させるのが最も安全な投資です。タイミングに正解はないからこそ、自分のルールを明瞭にして含み益を利益に変えていくことが重要です。
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