不動産投資で節税を狙うなら! 税金の仕組みと注意点を理解する
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銀行への貯金のみでは、あまり資産の増加が見込めない昨今、不動産投資で資産運用を考えているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。会社員が不動産投資を行うメリットは、もう1本収入の柱ができるということだけではありません。実は、節税効果も期待できます。ただし、ただ不動産投資をすれば良いというわけではなく、効果的に節税を実現するためには、基本的な納税方法や税金の種類を知る必要があります。今回は、会社員が不動産投資を行う際に必要となる税金の仕組みと節税について紹介します。
1.給与所得と不動産所得の納税方法
会社員の場合、所得税と住民税が毎月の給料から源泉徴収され、会社が納付を代行します。本来、所得税は1年間の所得に対して課されるものですが、会社は毎月の給料をもとに年間の所得を推定し、毎月代行する税金分を源泉徴収しているのです。推定所得額であるため、通常は実際の年間所得と差が生じます。その差額を年末に調整するのが「年末調整」です。
会社で行う源泉徴収と年末調整は、所得税額と住民税額を給与所得のみで算出するものです。そのため、不動産投資による不動産所得(もしくは事業所得)がある方は、ご自身で翌年3月までに確定申告をしなければなりません。ここで重要なのは、会社で源泉徴収される所得税や住民税と、確定申告で納税する税金は同じ「所得税」であるということです。所得の種類が異なっても同じ「所得税」であることから、不動産投資で損失が出た場合には、源泉徴収された所得税の還付を受けることができる場合があります。このような仕組みのことを「損益通算」といいます。
2.不動産投資で節税ができる仕組みとは
確定申告による損益通算について詳しくみていきます。
損益通算を知れば節税が分かる
損益通算とは、次の4つの所得において損失が生じたときに、他の所得金額から損失を差し引くことができる仕組みのことです。
〇不動産所得
〇事業所得
〇譲渡所得
〇山林所得
不動産投資による所得は、上記のうち不動産所得もしくは事業所得となります。そこで本記事では、不動産投資による所得が「不動産所得」であるとして解説します。
給与所得と不動産所得の損益通算は、次のような流れで行います。
⓵「給与所得」による所得税を、会社が源泉徴収・年末調整により代行して納める
⓶翌年、前年度の不動産所得を含めて確定申告を行う。その際に、不動産所得の損失があれば、給与所得から差し引く「損益通算」が適用可能となる
⓷損益通算を行うと、課税対象の「課税総所得金額」が小さくなる
⓸「課税総所得金額」が小さくなれば納税額も小さくなるため、すでに源泉徴収により支払われた所得税の還付が受けられる
この流れをみると、損益通算は「損失が出たときにしか使えないなら、節税メリットは少ないのでは」と感じるかもしれません。しかし、そんなことはありません。なぜならば、不動産所得では現金の収支が黒字でも、帳簿上の収支が赤字になるケースがあるからです。
不動産所得は帳簿上赤字にできる減価償却
前項で現金収支が黒字でも、帳簿上の収支が赤字になることがあると記述しましたが、これは、建物の取得費用を「減価償却費」として経費計上することができるからです。
減価償却費とは経費の一つです。事業で必要な物品を購入すると、通常は購入時に全額経費として計上します。しかし、マンションなど高額な資産を取得年のみ経費計上すると、その年の経費だけが大きくなってしまいます。そこで、税法上では、取得費用を耐用年数に応じて分割して計上できるようにしています。この仕組みのことを「減価償却」、取得費用を分割したもののことを「減価償却費」といいます。減価償却の対象となるのは、建物や機械設備、車など取得費用が大きく、時間の経過等によって価値が減っていく資産です。
- 減価償却費:取得費用を、法定耐用年数に応じて分割した費用のこと
- 法定耐用年数:税法上の資産の使用可能期間のこと
- 減価償却資産:減価償却の対象となる資産のこと
「減価償却資産」と「耐用年数」は、国税庁のホームページで確認することができます。例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションであれば、耐用年数は47年です。したがって、47年かけて、以下の計算式で分割した減価償却費を経費計上していきます。
減価償却費の計算式=取得価額×定額法の償却率
例えば、100万円で購入した、耐用年数10年の定額法が適用される減価償却資産の場合、次のように10万円を10年間に渡って減価償却費として計上することができます。
- 取得費用:100万円
- 耐用年数:10年
- 定額法の償却率:0.1
- 減価償却費:100万円×0.1=10万円
このように、毎年の減価償却費が一定の減価償却方法のことを「定額法」といいます。減価償却方法には、「定額法」のほかにも「定率法」もありますが、2016年4月1日以後に取得した建物の償却方法は「定額法」のみが適用可能となっています。また、償却率も省令で定められています。
不動産投資における減価償却のポイントは、2年目以降の減価償却費を経費計上できる点にあります。実際には発生していない費用を減価償却費として差し引くことで、現金収支が黒字でも、帳簿上では損失を出しやすくなるのです。不動産投資は初期投資の費用が大きくなりますから、毎年の減価償却は大いに活用できます。
なお、損益通算について、「損失を出したほうが節税になる」と誤った認識をお持ちの方もいます。しかし、不動産投資で最も大切なのは収益を上げることです。健全な不動産投資を行いつつ、減価償却費や損益通算をうまく使う。それが不動産投資の正しい節税方法といえるでしょう。
3.節税目的の不動産投資に潜む4つの注意点
不動産投資では減価償却や損益通算によって節税が可能ですが、必ずしも節税できるわけではありません。ここでは、特に注意したい4つのポイントについてご紹介します。
金融機関からの借入金は損益通算の対象外
金融機関から借り入れをして不動産投資を行うオーナーは多いですが、その借入金の返済にかかる費用は不動産所得の経費にはなりません。そのため損益通算の対象にもなりません。
ただし、借入金の利子の一部については経費とすることが可能です。原則として、建物部分にかかる借入金の利子は損益通算が可能ですが、土地に対する借入金の利子については、不動産所得の損失の有無と金額によって取り扱いが変わります。ここでは、不動産所得において損失が生じると、土地に対する借入金の利子は損益通算の対象外となることが多いことを覚えておきましょう。
前提が崩れれば節税できないことがある
ここで紹介した節税方法は、安定した給与所得と不動産投資が継続してこその方法です。会社を退職したり、不動産物件を売却したりして状況が大きく変わることも考えられます。
なお、所得税と住民税では、控除額や税率が異なります。所得税で還付が受けられたからといって、住民税でも同じように還付が受けられるとは限らない点にも注意が必要です。
税制改正によって仕組みが変わることもある
税制は、法改正が多いことで知られています。減価償却費や損益通算の仕組みもいつ変わるかは分かりません。したがって、日々アンテナを立てて、情報をキャッチするようにしましょう。法改正や制度変更があったときは、その内容を理解するだけでなく、ご自身の不動産投資にどのような影響があるかまで認識することが大切です。
相続税対策を検討する場合は、別の視点が必要
本記事で紹介したのは給与所得がある方の、所得税を節税する仕組みです。相続税対策とは異なりますのでご注意ください。相続税対策として不動産投資を活用する場合には「相続税評価額」や「納税資金」など別の視点が必要になりますので、節税方法も全く異なってきます。
4.不動産投資で行う節税は奥が深い
不動産投資で節税するには、税制を正しく理解する必要があります。制度は難しい部分もありますが、不動産投資のメリットをより享受するためにも、しっかりと理解していきたいものです。不明点は専門家の助けを借りるなどして、適切に節税効果を得ていきましょう。
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